「還暦からの底力」を信じて②
出口治明先生の「還暦からの底力~歴史・人・旅に学ぶ生き方」を人生のバイブルにする
60代、70代の仲間(還底会)たちの
ちょっとヨタヨタした「レジリエンスライフ」を紹介して行くシリーズです。
これから還暦を迎える40代、50代のみなさんにもぜひ読んでいただきたいと思います。
「還暦からの底力」を発揮するためには、還暦になってから気づいても遅いのです。
いまから「底力」の土台を作っていきましょう。
よろしければ「還底会」にご参加ください。
https://www.facebook.com/groups/192023410265683/
「国家資格」に挑戦する
「通訳案内士」という仕事は、最近書店でよく見かける「交通誘導員ヨレヨレ日記」とか
「マンション管理員オロオロ日記」風に言うとこうなるらしいです。
「通訳案内士のオーマイガー日記」。
「還底会」の初期メンバーの一人、Yさんが
超難関の「通訳案内士」(現在の正式名称は「全国通訳案内士」)の
国家試験に合格したのは働いていた会社を定年になる2年前のことでした。
アジア各国での海外居住生活が長かったYさんらしい選択であり
猛勉強の末につかんだ結果だったので
居酒屋でみんなで祝福したのを覚えています。
出口治明師匠の「60歳は人生の折り返し点に過ぎない」という言葉を
まさに実践した大いなる決断とチャレンジでした。
本人は会社の再雇用制度に目もくれずに突き進んだこの選択について
当時は「清水の舞台から飛び降りた気持ちでした」と言っていましたが、
後から聞いてみるとYさんはかなり周到に準備をしていたようで、
出口師の「清水寺の舞台の高さが12mとわかっていれば、12mのロープを用意すれば降りられる」という言葉通りの計画的な行動に見えました。
いまから思うとこれこそが「還底会」が目標にすべきYさんの「底力」の原点だったのでしょう。
超難関の試験とは?
実際にはこの「通訳案内士」(現在は「全国通訳案内士」)という国家資格を取るのは
かなり高いハードルを越えなければなりません。
一次試験は「外国語」「日本地理」「日本歴史」「産業・経済・政治及び文化に関する一般常識」「通訳案内士の実務」の5科目で平均70点以上が必要です。
そして二次試験は口述試験で、与えられたテーマに沿ったプレゼンテーションを
外国語で行わなければなりません。
その後そのプレゼンについて試験官との質疑応答もあります。
2022年度の合格率は10%以下です。まさに超難関の試験ですね。
まずこの高校受験を思い出させるような記憶力を求められる一次試験に
60歳手前のオッサンが挑戦しようと思ったことこそがYさんの「底力」でしょう。
実際のツアーガイドでは、日本語ですら説明が難しい日本の地理、歴史、文化等を
外国語でわかりやすく伝えなければならないのですから生半可な知識では無理ということです。
余談ですがYさんは人生60年間でなんと36回も引っ越しをしています。
もしかするとこの体験も日本を理解するうえで役に立っているのかもしれません。
自分をコンテンツにする仕事
「通訳案内士」は訪日した外国人をさまざまな観光地に案内しながら、
日本の文化や伝統、魅力などを外国語で伝える仕事です。
そのほか、ホテルの予約やスケジュール管理、滞在中のトラブル対応といった
雑多な業務を担うケースもあるようです。
仕事を始めた頃、Yさんに何が一番大変か聞いたことがあります。
観光案内もハードだが、それよりも個別のお客様対応が最も神経を使うと言ってました。
例えばミールリクエスト。
アレルギー、宗教上あるいは健康上の問題で食べられないものがある人をどうするか。
さらに「自由時間の過ごし方」もそれぞれの好みに合わせて考えなければならないし、
一人一人買い物の希望も違います。
また何と言っても「不測の事態」への臨機応変な対応が求められるそうです。
「不測の事態」って例えば何?と尋ねたところ、
「転ぶ」「遅れる」「ケンカ」「病気」「酔っ払い」と即答が返ってきました。
「オーマイガー!」
そしてYさんはその後「50歳以上のシニアのアメリカ人訪日客」をメインターゲットにした
ボストンの旅行会社に採用され、1回13日~19日間で東京、箱根、金沢、京都など
日本各地を回るパッケージツアーの専属ガイドをするようになりました。
1グループ最大16名で、通常の旅行者が行かない場所にも行くのがこのツアーの特徴らしく
とにかく事前の準備で忙殺されるそうです。
またアメリカの会社ですから、毎回全参加者のYさんに対するフィードバック(評価)が
会社に伝えられ、一定の基準を満たさないと次のツアーが回ってこないという
厳しい条件の中で続けているのはさすがです。
私が知っているYさんの英語はもちろんヘタではないけど、
そんなに流暢というレベルではありませんでした。
しかしアメリカ人旅行者のYさんに対する評価はほとんどが「次もYに頼みたい」でした。
それは旅行者がシニアということもあって、年齢の近いYさんへの親近感があったこと、
Yさんの日本の地理や文化についての知識が豊富であること、
そして何よりもトラブルの時でもヘタなジョークで笑わせる
Yさんの明るいキャラクターが受けたからだと思います。
「還暦からの底力」の中に
「人とのつながりは自分というコンテンツ次第」
という出口治明師の言葉があります。
「その人と一緒にいて面白かったり楽しかったりすると、人はおのずと寄ってくる」
つまりはそういうことなんですね。
また「還暦からの底力」の副題に「歴史・人・旅に学ぶ生き方」とありますが、
仕事を通じてこの3つを学べるのも「通訳案内士」の役得(修行?)でもあり、
出口師の言う「教養=知識×考える力」を養うこともできる素晴らしい職業だと思います。
コロナにも負けなかった「底力」
実はここ数年はコロナ禍で訪日外国人が激減し、仕事が全くなくなったYさんですが
この間も年金と貯金を切り崩しながら極力質素な暮らしをしつつ
再開の日に向けて勉強を続けていたそうです。
通訳案内士の団体による「ガイディングのオンライン研修」を受けたり、
英語の勉強のためにハリーポッター全7巻を読破したそうです。もちろん英語版で。
「お陰で英語力はかなり上達しました」と言っていました。
またYさんの夢はかつて11年間滞在したインドネシアからの旅行者に
インドネシア語でガイドをすることだそうです。
現在「全国通訳案内士」の対応言語は10か国語でまだインドネシア語はありません。
Yさんが日本で最初のインドネシア語通訳案内士になる日も近いかもしれません。
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